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最高裁判所第二小法廷 昭和27年(あ)5403号 判決 1954年11月05日

主文

本件各上告を棄却する。

理由

被告人木下英男、西野甚蔵の弁護人岡本尚一、同村田太郎の上告趣意第一点について。

所論別口貯金も、被告人木下英男、同西野甚蔵が大阪貯蓄信用組合の理事たる資格をもって、組合の名において、組合の計算において、組合に対する貯金として、受入れたものであることは、本件第一審判決の確定するところである。とすれば、たとえ、右貯金が組合員以外の者のした貯金であるが故に法律上無効であって、組合に対する消費寄託としての法律上の効力を生ずるに由ないものであるとしても、右貯金の目的となった金銭の所有権自体は一応組合に帰属したものと云わなければならない。けだし、金銭は通常物としての個性を有せず、単なる価値そのものと考えるべきであり、価値は金銭の所在に随伴するものであるから、金銭の所有権は特段の事情のないかぎり金銭の占有の移転と共に移転するものと解すべきであって、金銭の占有が移転した以上、たとえ、その占有移転の原由たる契約が法律上無効であっても、その金銭の所有権は占有と同時に相手方に移転するのであって、ここに不当利得返還債権関係を生ずるに過ぎないものと解するを正当とするからである。論旨は採用することを得ない(所論引用の大審院判例は右と抵触する範囲において変更を免れないものである)。

同第二点について。

原判決の趣旨は本件被告人の行為は、主として第三者たる神沢信太郎、田中新次郎の利益を図る目的を以て為されたものとするにあることは、原判文上明らかであって、何ら所論の判例に違反するところはないのである。

その余の論旨は、刑訴第四〇五条の適法な上告理由にあたらない。

被告人神沢信太郎の弁護人坂井宗十郎の上告趣意も刑訴第四〇五条所定の適法な上告理由にあたらない(判例違反を主張するけれども、判例を具体的に摘示していない)。

被告人田中新次郎の弁護人中野留吉の上告趣意は単なる法令違反、事実誤認又は量刑不当の主張であって、適法な上告の理由とならない。

また記録を精査しても刑訴第四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四〇八条により主文のとおり判決する。

この判決は、裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

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